花札|鳥

花札4月の花は藤!意味やあの鳥の意図とは?【赤い月の意外な秘密も!】

花札には日本の花鳥風月を描いたものが多いですが、花札4月にあたるのは「藤にホトトギス」。

花札4月藤とホトトギス

この札のつぶつぶとしたものが「藤」ですね。

見た目からこの札を「黒豆」と呼んだりもしますが(確かに似ている)、そもそもなぜ4月に藤の花が描かれているのでしょう?

またその前を飛んでいるホトトギス。

ホトトギスってあまり日常でお目にかからないので、どういう鳥か全く見当もつかないですよね。

そのホトトギスがなぜ藤と一緒に描かれているのか、それもあわせて調べたのでシェアしますね。

そして、私はここが一番びっくりした!

このホトトギスのバックに描いてある謎の赤い月。

藤にホトトギス1枚の花札

そもそもこの存在、気づいてました?

シロ

私は全く気づかずスルーしてました(笑)

鳥と同化して全く気づかなかったこの赤い月、実は意外な事実が隠されていたんです。

調べてみて「え?!」となったその理由。

面白かったのでシェアさせていただきますね。

ではまずは、藤が描かれた意味から見ていきましょう!

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花札4月に藤が書かれている意味とは?

花札の絵には四季折々のものが描かれていますが、どちらかというと身近で、同時に縁起を担ぐ絵柄が好まれて描かれています。

花札4月に描かれた藤も、そういった傾向から選ばれたと考えられています。

ここではもう少し具体的にその理由を紐解いていきましょう。

藤が花札の絵柄に選ばれたのには、大きく3つの理由があります。

  1. この時期(旧暦4月)に咲くとても美しく魅力的な花だったから
  2. 今よりも生活に欠かせない身近な花だったから
  3. 縁起のいい植物だったから

特に2番めの理由が私としてはちょっと意外でした。

では、理由を一つずつ説明していきますね。

1. 藤はこの時期に咲くとても美しく魅力的な花だったから

昔も今も藤が愛される理由は、変わりませんね。

まずはなんといってもこれでしょう!

藤が愛される1つ目の理由、それはこの美しさです。

藤の花

ほんと、きれいですよね~。

藤の花って小さい紫色の花がいくつも咲いていて、可憐だけどとても豪華!

藤が咲く時期は旧暦で言えば4月。

今でいうと4月下旬から6月上旬ですね。

花札の4月にあたるこの時期に一気に満開になります。

近くで一つ一つ花を見てもとてもきれいなのですが、藤の花の魅力はなんといっても「藤棚」。

藤棚

藤はマメ科のつる植物なので、そのつるを這わせて育てる藤棚はとても豪華で圧巻です!

この藤棚、今と同じように花札が普及した江戸時代にも人々を楽しませる存在だったんです。

藤棚には数々の名所があり、中でも今も藤の名所として知られる亀戸天神は特に有名で、あの歌川広重がその様子を多くの浮世絵に残していたり、歴代の徳川将軍が花見ならぬ「藤見」に訪れるほど。

シロ

それだけ今と変わらず、江戸時代でも藤は多くの人を魅了し楽しませていた存在だったんですね。

2. 藤は実は生活に欠かせない身近で万能な花だった!

ここまでさんざん「美しい」と書いてきたので、藤は観賞用の植物と思いがちですが、さにあらず!

実は生活に欠かせない実用的な花でもあったんです。

シロ

生活に欠かせない?あまりピンとこないなあ・・・。

そう思いますよね?

生活に欠かせないとは何かというと、例えば、昔の人は藤を食べていたんですって!

花は天ぷらや花茶に、若芽や根も食用として用いられていました。

藤の天ぷら花茶 イメージイラスト

今でも花を天ぷらや塩漬け、砂糖漬けにして楽しむこともあるようですよ。

藤にはマメ科の特徴である「レクチン」という毒性を持っています。生で食べたり大量に食べると中毒になるので要注意です!

あと藤の特徴であるつるの部分はとても強くて切れにくいことから、籠や、布、紙、家具に用いられていて、江戸時代には藤を使った「藤衣」と呼ばれる仕事着も愛用されていました。

他にも漢方に使われたりなど、見るだけじゃなく人々の生活まで役立ってくれる、衣・食・住に便利な植物だったんです。

シロ

藤って見て楽しむ鑑賞のイメージしかなかったら、生活の中で実際に使われていたなんて意外ですよね。

3. 藤はとても縁起がいい植物だった

藤の木

藤は観賞用として、また生活に欠かせない植物として人々に愛されて来ましたが、もう一つ愛された理由があります。

それは「神木」としての存在です。

ツル科のマメ植物である藤は、ツルを他の樹木に絡みつきながら成長していくので、繁殖力が強いことから長寿や子孫繁栄の縁起のいい象徴とされてきました。

現在でも、樹齢数百年から千年を超える藤の木が各地にあり、御神木として大切に祀られています。

シロ

女性が着る着物や帯の柄(文様)としても、縁起のいいものとして使われることが多いんですよ。

また、花が下に垂れ下がる様子がたわわに実る「稲穂」のように見えることから、長寿だけでなく豊作を祈る神木としても大切にされてきました。

藤の花イラスト

今でも農作業の始まる前(田植えの始まる5月8日頃。昔は旧暦の4月8日)に「天道花」という行事が行われています。

これは藤の花をツツジや山吹の花と一緒に竿の先につけて天に向かって掲げ、五穀豊穣を願って天の神様にお供え物をするという行事です。

このように、昔から藤は縁起のいい象徴として幅広く愛されてきた植物だったというわけなんです。

藤は美しく生活に欠かせない神聖な植物だった

まとめると、藤は

  1. 美しく人々を魅了する花
  2. きれいなだけじゃなく生活にも欠かせない植物
  3. 子孫繁栄や豊作を祈る神聖な植物

として昔から人々に愛されてきました。

ちょうど旧暦4月はこの藤の花が咲き誇る時期。

つまり、「花札の4月は藤を描こう!」となるのもとても自然なことだと思います。

また、花札には子孫繁栄や長寿などの思いを込めた吉兆の図柄を描いていたため、この部分でもまた藤はうってつけだったというわけなんですね。

シロ

藤ってきれいだから花札に描いたのかな?ぐらいにしか考えていなかったけど、縁起、美しさ、身近な花で花札の題材にピッタリだったんですね。

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ホトトギスがなぜ一緒に描かれているの?

さて、藤が描かれた意味がわかったところで、次に気になるのはその前に飛んでいるホトトギス。

どうして一緒に描かれているのか、気になるその理由をご紹介しましょう。

ホトトギスが描かれている理由とは?

ホトトギスと聞いて「あ~!あの鳥ね」とわかる人は少ないと思います。

↓こちらが実際のホトトギスです。

木に止まっているホトトギス

あら、意外とかわいらしい!

花札の絵よりも実物のほうが何倍もかわいいホトトギスですが、なぜこのホトトギスを花札に描こうと思ったのでしょう

それは、藤と同じく、ホトトギスもこの時期を象徴する身近な鳥だったからなんです。

ホトトギスは農業に欠かせない鳥だった

田植えイメージ

ホトトギスは渡り鳥で、春が終わりそろそろ夏が始まるという初夏に日本にやってきて鳴き始めます。

この頃はちょうど田植えを始めるのにいい時期。

その声で人々は「そろそろ田植えをする時期だ」とわかったといいます。

こうしてホトトギスは農業を勧める鳥、つまり「勧農鳥」として親しまれるようになったんです。

また、この頃には前述の藤の花も満開になっています。

ということは、満開の藤の花あたりをホトトギスが飛び交うという光景はこの時期に頻繁に見られていたのではないでしょうか。

花札4月藤とホトトギス1枚だけの花札

花札に描かれている光景はまさにその様子を切り取ったというわけなんですね。

シロ

藤が咲く頃にホトトギスがやってくる。
この2つはセットでこの頃によく見られる光景だったんですね。

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後ろに書かれている月の意味とは?

さて、お待たせしました。

後ろに描かれている赤い月、あれって一体どういう意味があるんでしょう。

・・・。

実はあれ、全く意味はないんです。

シロ

え!だって赤い月ってなんか意味ありそうに見えるんだけど?

私もそう思いました。

でも調べたところ、意味はないどころか、最初はあの月すら存在しなかったんです。

赤い月はなかったっていったいどういうこと?

赤い月がなかった理由。それは花札の製造に関係がありました。

花札は昔、手刷りという作業で作られていました。

手刷りとは今の印刷とは異なり、木版画とおなじように木の板を彫って版を作り、手で版画を擦って花札を作る方法です

手刷りで作られる花札は日本全国各地に職人さんがいたため、絵柄が地方で微妙に違い、地方独自の絵柄となりました(これを地方札といいます)。

実はこの手刷り地方札が、赤い月が生まれる発端となります。

赤い月は藤とホトトギスを際立たせるデザイン

藤とホトトギスの札にある月。

これ、もともと江戸時代の札には描かれていませんでした。

それが時代を経て地方で様々な職人さんが作成していくうちに、微妙に絵柄の違う札ができあがり、その過程で赤い三日月も出現するようになったんです。

ただこの赤い三日月も、バリエーションがバラバラでした。

赤い満月だったり、また月ではなく太陽や赤い雲だったり(赤いのは共通)。

つまり、藤とホトトギスの背景の差し色として、赤いデザインのものを描いたと想像することができます。

江戸時代~昭和時代 伝統の花札一覧 – 日本かるた文化館
↑こちらで花札の図柄を時代ごとに見ることができます。

シロ

「なんか背景がさみしいから、赤い雲でも描いておこうかな?」
「じゃオレは雲じゃなく月にしよう!」
みたいな感じで、デザインしていたのかもしれません。
昔はこうやって職人さんの個性が出ていたデザインだったんですね。

このように地方でバラバラに描かれた、赤い月をはじめとした背景のデザイン。

その後、京都で扱っていた絵柄が全国のスタンダードとして採用されることになり、その札に描かれていた赤い三日月がそのまま花札の絵柄として定着し、今に至ります。

だから現在では、藤にホトトギスの札には赤い三日月が描かれているというわけなんです。

シロ

赤い三日月に意味はなく、藤とホトトギスを際立たせるために描かれた「デザイン」ということなんですね。

まとめ

  • 藤が描かれた意味は、藤はこの時期に満開になる美しく生活に欠かせない植物であり、神聖で長寿や子孫繁栄などの縁起の良さからその願いも込めて描かれた
  • ホトトギスも「勧農鳥」としてこの時期にやってくる鳥で、藤とホトトギスの取り合わせはこの時期を表すのにふさわしかったから一緒に描かれた
  • ホトトギスの後ろに描かれている赤い月に意味はなく、デザインとして生み出されたもの

シロ

正直最初はそんなに興味のなかったこの札も、調べ終わるとすごく面白かったです!
特に赤い月は「意味ないんかい!」と突っ込まずにいられませんでした。
ただ、花札のホトトギスの絵だけは可愛くなくて、まだ納得いかない・・・。